2018(平成30)年度 事業報告
はじめに
2018年を振り返ると、各地で、地震・異常気象による自然災害(豪雨・浸水等)の脅威を感じた年でした。また、知的・発達障がいのある人が避難の遅れで亡くなられたといった報道もありました。今後、障害のある人への災害時対応(避難誘導の在り方)や、市町村行政への福祉避難所の設置促進等に向けての働きかけが必要なことや、災害リスク・防災・減災について学び備えること、地域でのつながり方を考える機会にもなりました。
国では、地域共生社会の実現のために「地域丸ごと」をスローガンに包括的な支援体制の整備に向け、2018年4月から改正障害者総合支援法を施行、報酬改定も実施されました。
新たな障害福祉サービスとして
・地域で独立生活を支援する「自立生活援助」
・就職後の生活面をサポートする「就労定着支援」
・重度障がいの人や高齢障害者対応の「共生型サービス」
・日中もグループホームで過ごす「日中サービス支援型グループホーム」
なども制度化されました。
また、知的・発達障がいのある人がその人らしい暮らしを選んだり、重度の障がいがあっても本人の意思を確認し尊重する「意思決定支援」が、総合支援法の中で支援者の責務として位置づけられました。
一方、2016年に障害者雇用促進法が改正され、障害のある人への合理的配慮の提供義務と雇用の促進の中、「中央省庁等における障害者雇用率の水増し問題」が発覚し、障害者でない人を障害者雇用の対象者とした違反事案が報道されました。また、優生思想に影響を受けた旧優生保護法(1948~96年)を巡る問題として、出生前診断による命の選別問題や強制不妊手術への訴訟がありました。そこで、旧優生保護法に関して、全国手をつなぐ育成会連合会は、草創期の「機関誌手をつなぐ」等を通じて検証しその結果を記者発表しました。全国手をつなぐ育成会連合会は、過去を反省し障害者の権利擁護に向けて取り組む決意を表明しました。
奈良県手をつなぐ育成会の活動
国は、2020年度末を目途に、市町村・福祉圏域で1か所「地域生活支援拠点等」を整備するように義務づけています。障害者の高齢化・重度化の課題や親なき後を見据え、居住支援の機能(相談・体験の場・緊急時の受け入れ・専門的な人材の確保等・地域の体制づくり)の整備を進めなければなりません。
そこで、2018年9月に「生駒市」・「生駒市手をつなぐ育成会」・「奈良県知的障害者施設協会」の主催による講演会「地域生活支援拠点事業について考える~地域で生み出す拠点事業の在り方~」に参加し、県外の先進地の事例報告と入所施設からの地域移行について学びました。また、2018年11月には、「第48回奈良県手をつなぐ育成会研究大会」において、障がいのある人の高齢化(重度化)の支援として、「親なき後をふまえ、わが子らのこれからを考えよう~豊かなライフステージづくり~」と題して講演会とグループ討議を行いました。講演は、大和郡山育成福祉会から「高齢化にともなう相談支援と居住支援の中から現状と課題」についてと、いこま福祉会の生活支援センターかざぐるまより「生駒市地域生活支援拠点等の整備の現状と課題」についての報告がありました。関係者の関心が高く定員を越えての参加があり会場を変更しての開催となりました。グループ討議では、グループホーム不足・支援者不足・医療的ケア等の課題についての情報共有の場となり地域生活支援拠点等の整備への関心が深まりました。
2019年3月には、『知っておこう!!「障がい者の高齢化にむけて」』をテーマに知的障害者相談員と親なき後検証委員会との合同研修会を開催しました。内容としては「65歳問題」についてと事業所(ホームヴィレッジ)からの医療的ケアの必要な人への支援(劇症1型糖尿病・重積てんかん・認知症・誤嚥性肺炎)の事例報告をしていただきました。そこで、グループホームでの看取りへの支援体制の課題も浮上してきました。
サンメイトの活動
2019年2月23日~24日には「第5回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会 京都大会」が国立京都国際会館において「京(みやこ)からほほえみあふれる新しい未来へ」をテーマに開催され、近畿手をつなぐ育成会連絡協議会の各府県等の育成会が企画運営しました。奈良県手をつなぐ育成会は、本人大会「はたらくトーク~みんなで話し合おう~」を担当しました。グループトークでは、特別支援学校の進路の先生方や、障害者就業・生活支援センターの相談員の方々のご協力により、本人たちが人前で話す経験の場・仲間との交流の場となり、本人たちの自信につながりました。
2018年10月、奈良県主催の「平成30年度奈良県障害者虐待防止・権利擁護研修」で、本人の会「サンメイト」のメンバーが体験発表(テーマ:はたらく現状と家族について)を行いました。また、奈良県制作の「まほろばあいサポート運動」の啓発用DVDに「はたらく現場からの発信」としての撮影協力(出演)をしました。
全国手をつなぐ育成会連合会とのつながりと活性化に向けて
全国手をつなぐ育成会連合会主催による、障害者理解を全国に広めるための「啓発キャラバン隊」づくりの研修や、「意思決定支援」「高齢障がい者支援」のフォーラムに参加しました。その他、次世代育成をスローガンに掲げ、地域育成会の活性化に向けての事業も推進されました。
第5回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会 京都大会では、分科会のテーマとして初めて「障害児者のきょうだい」を取り上げ、実際に活動しているきょうだい会の方にも参加いただき、生の「きょうだいの声」を聞くことができました。親・本人の高齢化問題を考える時、きょうだいの意識や事情についても配慮しつつ検討していくことが必要であると気付きました。
障害者の文化芸術活動の推進に向けて、障害のある人の多様な文化と価値観を認め合う社会の創造を願い、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク会議が行われました。これに連動して、奈良県育成会のホームページを11月にリニューアルし、サンメイト美術館を設置し作品募集をいたしました。これからも随時作品を募集しますので、本人たちの活動発表・発信の場として大いに活用していただきたいと思います。
育成会の存在意義と活動を広く知っていただくために、奈良県育成会のパンフレットを作成し、関係機関に配布を始めました。このパンフレットには、QRコードを掲載しましたので、ホームページの閲覧が容易になりました。
新成人のつどいは応募がなく開催に至りませんでしたが、成人された本人さま・保護者さま、心よりお祝い申し上げます。
その他の事業や委員会活動は例年通り行いました。
最後に会員減等により、会の運営・財政問題について本格的に考えて活動すべき時期が来ている事を問題提起して2018年度の報告と致します。
その他の活動・研修については次ページ以降の表をご覧ください。
2018年度活動報告
全国手をつなぐ育成会連合会 会議・研修
開催日 | 内 容 | 開催場所 |
2018年 6月27日 |
全国手をつなぐ育成会連合会定時総会 | アットビジネスセンター東京駅 |
2019年 3月7日~8日 |
育成会フォーラム
行政説明会・代表者・事務局長会議 |
同上 |
3月12日 | 「キャラバン隊」づくり研修会 | 同上 |
近畿手をつなぐ育成会連合会 役員会(於:大阪手をつなgoodホール)
開催日 | 2018年 | ||||
4月 9日 | 6月4日 | 8月6日 | 9月28日 | 11月26日 | |
2019年 | |||||
1月21日 | 2月4日 |
奈良県手をつなぐ育成会 三役会・理事会・市町村会長会・委員長会(於:社会福祉総合センター内ボランティアルーム、中会議室等)
三 役 会 | 理 事 会 | 市町村会長会・委員長会 | |
2018年 | |||
4月 | 11日 | 16日 | 16日 |
5月 | 9日・31日 | 15日 | - |
6月 | 5日 | - | - |
7月 | 3日 | 5日 | 12日 |
8月 | 3日 | - | - |
9月 | 4日 | 6日 | 13日 |
10月 | 2日・30日 | 18日 | 18日 |
11月 | 8日 | 8日 | 15日 |
12月 | 4日 | 13日 | 13日(委員長会議) |
2019年 | |||
1月 | 8日 | 17日 | 22日 |
2月 | 5日 | 27日 | 27日 |
3月 | 5日 | 13日・27日 | 27日 |
国・奈良県行政への要望活動等
訪問日 | 内 容 |
2018年 | |
6月22日 |
全育連を通じて2019年度の予算要望書を提出 |
7月10日 | 国要望・成年後見制度欠格条項への要望 高市早苗氏事務所・小林茂樹氏事務所を訪問 |
7月12日 | 国要望・成年後見制度欠格条項への要望 堀井巌氏事務所・佐藤啓氏事務所を訪問 |
7月13日 | 国要望・成年後見制度欠格条項への要望 奥野信亮氏事務所・田野瀬太道氏事務所を訪問 |
9月 7日 | 奈良県障害者福祉連合協議会 幹事会 |
10月31日 | 奈良県障害者福祉連合協議会 要望書提出 |
12月20日 | 育成会要望(医療問題を県障害福祉課と交渉) |
2019年 | |
2月22日 |
奈良県障害者福祉連合協議会 要望回答 |
2月27日 | 奈良県知事接見 医療アンケート結果の説明と要望他 |
2018年度事業報告(研修会等)
開催日 | 事業内容 | 開催場所 |
2018年 | ||
4月16日 | 奈良県行政説明会
(特別支援教育・障害福祉) 31名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
4月20日 | 第22回近畿手をつなぐ育成会連絡協議会
リーダー養成研修会 10名 |
大阪手をつなぐ育成会
つなgoodホール |
6月 1日 | 第31回奈良県手をつなぐ育成会総会
講演「なぜ虐待はなくならないのか?」 509名 |
奈良県
社会祉総合センター |
6月12日 | 子育て中のお母さんのための研修会
「心配しないで!性のこと」 88名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
7月11日 | HAPPYRⅠNG
(子育て中のお母さんのための懇談会) 7名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
9月 1日 | 地域生活支援拠点等事業について考える
~地域で生み出す拠点事業の在り方~ |
生駒市,セイセイビル |
9月12日 | HAPPYRⅠNG
(子育て中のお母さんのための懇談会) 8名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
9月25日 | 知的障害者相談員研修会
計画相談について ~個々の課題とその重要性を考える~ 49名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
11月14日 | HAPPYRING
(子育て中のお母さんのための懇談会) 9名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
11月19日 | 第48回奈良県手をつなぐ育成会研究大会
親なき後をふまえ、わが子らの「これからを考えよう」~豊かなライフステージづくり~ 144名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
2019年 | ||
1月16日 | HAPPYRING
(子育て中のお母さんのための懇談会) 10名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
1月31日 | 「この子らを世の光に」啓発委員会研修会 (NPO法人奈良県自閉症協会 奈良HA-HA-HA キャラバン隊による疑似体験) 19名 | 奈良県
社会福祉総合センター |
2月23日 ~24日 |
第5回全国手をつなぐ育成会連合会
全国大会 京都大会(第57回近畿知的障がい者福祉大会 併催) 奈良県から100名 |
国立京都国際会館 |
3月5日 | 知的障害者相談員と親なき後検証委員会
合同研修会『知っておこう!!「障がい者の高齢化にむけて」』 70名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
関係機関の事業等の参加
開催日 | 内容 |
2018年 | |
5月30日 | 奈良県障害者大芸術祭 推進会議 |
5月31日 | 奈良県障害者相談等調整委員会 総会 |
5月27日 | 第18回障害者スポーツ大会陸上競技大会 |
6月20日 | 平成30年度奈良県社会福祉協議会 第1回評議委員会 |
7月 5日 | 平成30年度「まほろばあいサポート運動」推進協議会 |
7月 20日 | 平成30年度奈良県発達障害者支援地域協議会 |
7月 20日 | 奈良県発達障害者支援センターでぃあー 開所式 |
7月 22日 | NHKハートフォーラム「自閉スペクトラム症の人たちが暮らしやすい社会を目指して~一人ひとりの特性に応じたICT支援の可能性~」 |
7月 25日 | 平成30年度障害者施策推進協議会 |
7月 31日 | 奈良県人権を確立する県民集会 |
9月 29日 | 奈良県障害者総合支援センター 開設記念式典 |
10月 1日 | 赤い羽根共同募金のセレモニーと募金活動 |
10月 3日 | 奈良県運営適正委員会 |
10月 25日 | 平成30年度奈良県障害者虐待防止・権利擁護研修 |
11月 20日 | 第38回日本身体障害者団体連合会 近畿ブロック大会 |
11月 24日 | 全国重症心身障害児者を守る会 近畿ブロック大会 |
11月 28日 | 奈良県障害者スポーツ協会 理事会 |
12月 4日 | 奈良県知事表彰 (奈良県自立更生者及び更生援護功労者の表彰) |
12月 6日 | 社会参加推進センター主催による啓発ティッシュ配り |
2019年 | |
1月 27日 | 社会福祉法人以和貴会 設立30周年式典 |
2月 3日 | 奈良県障害者大芸術祭推進会議 |
3月 15日 | 平成30年度奈良県社会福祉協議会 第2回評議委員会 |
*県議会・県行政・各養護学校への訪問や挨拶、関係機関の総会出席については、割愛させて頂きました。
◎社会参加促進事業
①本人の会「サンメイト」の育成
②第18回奈良県障害者スポーツ大会への参加
③第18回全国障害者スポーツ大会(福井大会)への参加
◎社会啓発事業
①「この子らを世の光に」運動
②障害者週間の取り組み(12月3日~12月9日)
・12月6日、社会参加推進センターの取り組みとして、近鉄奈良駅・
近鉄大和八木駅・JR奈良駅において、啓発ティッシュを配布。
・各市町村において『「知ってほしいな!」わたしたちのこと』のリーフレ
ットを各小学校4年生に配布(赤い羽根共同募金事業)
③「まほろばあいサポート運動」推進
④全国手をつなぐ育成会連合会の機関誌「手をつなぐ」の推進
(購読総数 7416冊)
⑤「奈良県手をつなぐ親たち」広報紙の発行・配布
⑥「本人の会全員集合」広報紙の発行・配布
◎障害者権利擁護事業
①成年後見制度の利用促進
②意思決定支援の推進
◎奈良県受託事業
①奈良県障害者110番事業委託事業
②奈良県知的障害者本人活動支援事業
③奈良県知的障害者相談員強化事業
◎関係機関との連携
①社会福祉法人奈良県手をつなぐ育成会
②奈良県障害者スポーツ協会
③奈良県知的障害者施設協会
④奈良県障害者福祉連合協議会
⑤奈良県特別支援教育関係機関
⑥奈良県社会参加推進センター
⑦奈良障害フォーラム(NDF)
⑧奈良県発達障害者支援センター「でぃあー」
⑨奈良県自立支援協議会