2019(令和元)年度 事業報告
はじめに
2019年は、5月1日より元号が「令和」になりました。
新しい時代は、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に心のバリアフリー、障害者への理解促進を推進し、障害者の活躍を目指し、民間・団体・マスメディアが連携し、多様な文化と価値観を認め合う地域共生社会の実現に向けて踏み出した年でした。
過去において、人権侵害であった旧優生保護法の下で強制不妊手術を受けた障害者への救済法が4月に施行され、都道府県に相談窓口が設置されました。
国の「社会保障審議会障害者部会」では、令和3年~7年までの次期「第6期障害福祉計画」及び「第2期障害児福祉計画」の基本指針の見直しの検討会が
10月からはじまりました。併せて平成31年度の障害福祉サービス等の報酬改定を受けて障害福祉人材の処遇改善がありました。
また10月からの消費税増税により「障害基礎年金」の受給者にも「年金生活者支援給付金」が支給されています。
奈良県では、令和2年度~令和6年度の次期「奈良県障害者計画」の策定に向けて、目標「障害のある人一人ひとりの思いを実現できる奈良県」を掲げ、障害のある人への困りごとアンケート、福祉団体とのヒアリングや意見交換会等の検討を経て、3月に「奈良県障害者計画」が策定されました。
一方で、自然の脅威として、春から10月にかけては、異常気象による自然災害(台風3号・5号・15号・19号・21号)にみまわれ、甚大な被害がもたらされました。台風19号の影響により、10月12日の「第19回全国障害者スポーツ大会・茨城大会」は中止となりました。
2020年に入り、中国の武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、3月13日にはWHO(世界保健機構)がパンデミック(世界的な大流行)を宣言しました。2020オリンピック・パラリンピック開催も延期となりました。3月28日には、千葉県の知的障害者支援施設「北総育成園」で集団感染が発生しました。知的障害者の特性を考慮して官民が協力して「施設の病院化」として慣れた場所でのケアをされています。
奈良県手をつなぐ育成会の活動について
2019年度を振り返ると、研修事業は予定どおり開催が出来ました。
11月の「第49回奈良県手をつなぐ育成会・研究大会」では、「令和元年 親なき後をふまえ、わが子らの『これからを考えよう』~豊かなライフステージづくりと親の安心のために~」と題して行政報告・基調講演・リレートークを行いました。テーマへの関心が高く120人以上の参加がありました。リレートークでは、居住支援の在り方として新しいタイプの「日中サービス支援型グループホーム」創設紹介と、従来型グループホームから「利用者のニーズに応じたいろいろなグループホーム」の現状報告がありました。また、親も安心して託せる社会資源の充実に向けて「大和郡山市自立支援協議会」の実践報告では、家族の思いと本人の願いを受け止め、自立支援協議会と大和郡山市行政が動き、大和郡山市独自の障害福祉サービスができたとの報告がありました。今後、それぞれの市町村育成会から自立支援協議会へ働きかけを行い、市町村の社会資源づくりをする役割を育成会が担うことの意義を確認する大会となりました。
知的障害者相談員研修は9月「障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会づくりを目指して~まほろば『あいサポート運動』~」というテーマで、奈良県作成の奈良県障害理解促進DVDシルコトカラを視聴し、共生社会を作るための合理的配慮や新しい障害の捉え方(社会モデル)について理解を深めました。2月には親なき後検証委員会共催で「地域生活支援拠点等の整備について~地域の進捗状況を見てこれからを考える~」を実施。緊急時を生み出さない相談支援の在り方・実情に応じて介護保険施設との連携・柔軟な体験スタイルを考える必要性や、障害の有無に関わらず人同士のつながりを大切にした地域づくりが重要であると確認しました。
「新成人のつどい」は、来賓に副知事、特別支援学校等の先生を招き、和やかな雰囲気の中、先輩サンメイトとの交流も図れました。参加できなかった方にもお祝いのメッセージカードを送り喜びを共有しました。
県への要望活動。10月の奈良県への要望書の提出。12月の奈良県との交渉。1月に医療的ケアが必要な人の緊急支援事案が生じ、知的障がいのある人の退院後の支援体制の整備(訪問看護によるインシュリン注射や健康管理体制づくり)のために、3月に県議会厚生委員長へ要望し、関係者(一般社団法人奈良県手をつなぐ育成会・社会福祉法人奈良県手をつなぐ育成会・奈良県行政・利用者の保護者・県議会厚生委員長・看護師)を交え話しあい、具体化に向けて市町村行政とのケース会議につなげました。
総合企画会では、多くの提案が出されました。以下の通りです。
・賛助会員募集のパンフレット作成
・プロモーションビデオ作成
・キャラバン隊企画検討会
・「この子らを世の光に」文具啓発の理解促進チラシの検討
・特別支援学校等への協力依頼
(特別支援学校・奈良県特別支援教育研究会)
など
サンメイトの活動
9月
・「第49回本人の会サンメイト研究大会」~みんな笑顔で楽しく 創ろう~を開催しました。「創ろう」では、個別に自分らしいコースター創りを楽しみHP「サンメイト美術館」に全員の作品を掲載しました。
11月
・「第6回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会 熊本大会」本人大会には、7人が参加し、被災して復興中の熊本城周辺の散策や、熊本市電への乗車、宿泊したホテルではたまたま一人部屋となり、よい体験となりました。
・やまと郡山城ホールで開催された「まほろばあいのわコンサート」では、
サンメイトのメンバーが出演や鑑賞をすることができました。
1月
・新成人のつどい第2部では、新成人の皆さんと交流し楽しいひと時を過ごしました。
3月
・「大阪ともだちの会」とのサンメイト合同運動会は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対応として中止にいたしました。
「全国手をつなぐ育成会連合会」とのつながりと活性化に向けて
6月7日の第32回奈良県手をつなぐ育成会の総会は、全国手をつなぐ育成会連合会の久保会長を招き、「これからの育成会について」と題して講演をいただきました。
「第6回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会 熊本大会」が、11月23日~24日に約4000人が参集し開催されました。大会スローガンとして「一人ひとりを認め合う社会の実現~熊本のこころを全国に~」を掲げ、熊本の新しいシンボルとして完成した「熊本城ホール」でプレオープンイベント(こけら落とし)としての開催でした。
第5分科会「地域育成会の活性化・防災と育成会」では、2016年4月に起こった熊本地震から3年半を経た熊本からの発信として、特別支援学校を活用した「福祉こども避難所」についての提案や、「手をつなごう~熊本地震から得られた8つの知恵~」の情報提供をいただき、奈良県育成会のHP上に掲載しました。また、記念講演『幸せの企画術』の講師に放送作家・脚本家の小山薫堂氏やくまモンが出演し、熊本の復興に向けてふさわしく、地域と共に心をつなぐ記念大会となりました。
2月には、「全国手をつなぐ育成会連合会」の法人化にむけての臨時総会が開催され、定款・諸規定が承認され法人登記に向けて動きだしました。
3月の育成会フォーラムと行政説明会は、新型コロナウイルス感染症の拡大により中止となりました。また、2016年7月の津久井やまゆり園事件の裁判が1月から始まり3月に結審され植松聖被告の死刑が確定しました。植松被告の反省なき姿勢に全国手をつなぐ育成会連合会の久保会長は、横浜地裁の判決を受け「障害のある人への社会偏見に諦めずに立ち向かおう」と談話を発表されました。全国の育成会が障害者理解啓発活動に力を入れている中、奈良県育成会も、香芝市の実践報告や尼崎市のまんまるハートさんを招き「知的障害疑似体験プログラム」を体験しました。それにより、奈良県でのキャラバン隊づくりに向けて意識が高まりました。また、子育て支援委員会では一般の保護者から興味・関心が強い「はたらく」をテーマに取り上げ、研修会「元気ではたらく大人になるために~発達の気になる子どもの自己肯定感を育てる子育て~」を実施しました。懇談会では、「就労までの流れ」のチャートを作成・配布し、見通しを持てたという声や、入会につながるなどピアサポートとしての懇談会の継続の意義を感じました。
その他の事業や委員会活動もテーマを決めて取り組みました。
最後に会員減等により、会の運営・財政問題について本格的に考えて活動すべき時期が来ている事を問題提起して2019年度の報告と致します。
その他の活動・研修については次ページ以降の表をご覧ください。
2019年度活動報告
全国手をつなぐ育成会連合会 会議・研修
開催日 | 内 容 | 開催場所 |
2019年 6月25日 |
全国手をつなぐ育成会連合会定時総会 | 東京・貸会議室プラザ八重洲北口 |
2020年 3月4日・5日 |
育成会フォーラム 行政説明会・代表者・事務局長会議 |
コロナウイルス感染防止のため中止 |
近畿手をつなぐ育成会連合会 役員会(於:大阪手をつなgoodホール)
開催日 | 2019年 | ||||
4月8日 | 6月10日 | 8月5日 | 9月9日 | 11月11日 | |
2020年 | |||||
2月3日 |
奈良県手をつなぐ育成会 三役会・理事会・市町村会長会・委員長会
(於:社会福祉総合センター内ボランティアルーム、中会議室等)
三 役 会 | 理 事 会 | 市町村会長会・委員長会 | |
2019年 | |||
4月 | 12日 | 18日 | 18日 |
5月 | 9日・14日 | 16日 | - |
6月 | 6日・28日 | - | - |
7月 | - | 5日 | 11日 |
8月 | 8日 | - | - |
9月 | 5日 | 12日 | 19日 |
10月 | 3日・31日 | - | - |
11月 | 5日 | 7日 | 7日 |
12月 | 6日・11日 | 12日 | 12日 |
2020年 | |||
1月 | 8日 | 16日 | 23日 |
2月 | 6日・26日 | ||
3月 | 9日・18日 | 3日・17日・26日 | 26日 |
国・奈良県行政への要望活動等
訪問日 | 内 容 |
2019年 | |
7月 12日 | 全育連を通じて2020年度の予算要望書を提出 |
8月 29日 | 第1回奈良県障害者福祉連合協議会幹事会 |
10月 8日 | 奈良県障害者計画改定に関する説明会にて意見提出 (医療的ケアの必要な方への支援等) |
10月 29日 | 奈良県障害者福祉連合協議会 要望書提出 (障害者施策・予算要望) |
12月 23日 | 県交渉 ・グループホームの創設に関する規制緩和について ・知的障がい者の福祉と医療の連携の強化と施策の充実に向けて |
12月25日 ~1月 23日 |
奈良県障害者計画(案)に対するパブリックコメントに意見提出 |
2020年 | |
2月 20日 | 香芝市尾崎充典県議会議員と接見 |
2月 28日 | 奈良県障害者福祉連合協議会 要望回答 |
3月 4日 | 奈良県議会厚生委員長 大国正博氏と接見(要望活動) |
3月 11日 | 奈良県議会厚生委員会の傍聴 |
3月 19日 | 知的障害があり医療的ケアの必要な人の支援について(事例検討会) |
2019年度事業報告(研修会等)
開催日 | 事業内容 | 開催場所 |
2019年 | ||
4月 18日 | 奈良県行政説明会(特別支援教育・障害福祉)26名 | 奈良県社会福祉総合センター |
6月 3日 | 第23回近畿手をつなぐ育成会連絡協議会リーダー養成研修会 3名 | 尼崎市商工会議所 |
6月 7日 | 第32回奈良県手をつなぐ育成会総会 講演「令和元年これからの育成会」 475名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
6月 25日 | 子育て中のお母さんのための研修会 「元気ではたらく大人になるために」 93名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
7月 10日 | HAPPY*RⅠNG (子育て中のお母さんのための懇談会) 15名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
9月 6日 | 仔鹿園保護者研修会(講師として参加) 「就労された子どもさんを持つお母さんのお話」3名 |
仔鹿園 |
9月 11日 | HAPPY*RⅠNG (子育て中のお母さんのための懇談会) 17名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
9月 27日 | 知的障害者相談員研修会「障害のある人もない人もともに暮らしやすい社会づくりを目指して~まほろば「あいサポート運動」~ 32名 | 奈良県
社会福祉総合センター |
11月13日 | HAPPY*RING (子育て中のお母さんのための懇談会) 19名 |
奈良県心身障害者福祉センター |
11月 17日 | 第58回近畿知的障害者福祉大会 ~考えよう!本人の高齢化・親の高齢化~ 42名 |
神戸文化ホール |
11月 19日 | 第49回奈良県手をつなぐ育成会研究大会 親なき後をふまえ、わが子らの「これからを考えよう」~豊かなライフステージづくりと親の安心のために~127名 |
奈良県
社会福祉総合センター |
11月
23~24日 |
第6回全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会 熊本大会 奈良県から 13名 |
熊本城ホール |
2020年 | ||
1月 12日 | 第41回新成人の集い 52名 | 奈良県社会福祉総合センター |
1月 26日 | 音楽療法ミュージックケア 24名 | 奈良県心身障害者福祉センター |
1月 30日 | 「この子らを世の光に」啓発委員会研修会 (香芝市育成会実践発表と尼崎市育成会の啓発 キャラバン隊による疑似体験) 52名 | 奈良県 社会福祉総合センター |
2月14日 | 知的障害者相談員と親なき後検証委員会合同研修会「地域生活支援拠点等の整備について~地域の進捗状況を見てこれからを考える」 47名 | 奈良県
社会福祉総合センター |
関係機関の事業等の参加
開催日 | 内容 |
2019年 | |
5月 19日 | 第19回障害者スポーツ大会水泳競技大会 |
5月 26日 | 第19回障害者スポーツ大会陸上競技大会 |
5月 27日 | 令和元年度「まほろばあいサポート運動」推進協議会 |
6月 10日 | 第1回奈良県障害者大芸術祭推進会議 |
6月 11日 | 奈良県発達障害者支援センターでぃあー連絡協議会(全体会) |
6月 18日 | まほろばあいサポートメッセンジャー養成研修 |
6月 20日 | 社会福祉法人奈良県社会福祉協議会評議委員会 |
7月 1日 | 地域生活支援拠点についての研修会にち |
7月 13日 | 第54回近畿肢体不自由者福祉大会 |
7月 31日 | 部落差別等撤廃と人権確立を目指す奈良県民集会 |
8月 2日 | 令和元年度奈良県障害者相談等調整委員会総会 |
9月13日 | 令和元年度奈良県障害者施策等推進協議会 |
9月24日 | 令和元年度第1回奈良県自立支援協議会(傍聴) |
10月 1日 | 赤い羽根共同募金のセレモニーと募金活動 |
10月 7日 | 第1回奈良障害フォーラム代表者会議 |
10月 10日 | 全国第19回障害者スポーツ大会茨城県大会引率(中止) |
10月 18日 | 行動障害のある人の「暮らし」をささえる研修会 国立リハビリテーションセンター発達障害支援推進官・加藤潔氏「強度行動障害がある方々への支援Ⅱ」 |
10月 20日 | 第34回奈良県身体障害者体育大会 |
11月 11日 | 令和元年度奈良県障害者虐待防止・権利擁護研修 |
11月 21日 | 奈良県障害者施策推進協議会 |
11月 27日 | 奈良県障害者スポーツ協会 理事会 |
11月 30日 | クロージングイベント大芸術祭・障芸祭フィナーレ |
12月 3日 | 奈良県知事表彰(奈良県自立更生者及び更生援護功労者の表彰) |
12月 5日 | 社会参加推進センター主催による啓発ティッシュ配り |
2020年 | |
1月 28日 | 第51回奈良県特別支援教育研究大会 |
2月 5日 | 第2回奈良県障害者大芸術祭推進会議 |
*県議会・県行政・各養護学校への訪問や挨拶、関係機関の総会出席については、割愛させて頂きました。
◎社会参加促進事業
①本人の会「サンメイト」の育成
②第19回奈良県障害者スポーツ大会への参加
③第19回全国障害者スポーツ大会(茨城大会)への参加(天候により中止)
◎社会啓発事業
①「この子らを世の光に」運動
②障害者週間の取り組み(12月3日~12月9日)
・12月5日、社会参加推進センターの取り組みとして、近鉄奈良駅・
近鉄大和八木駅・JR奈良駅において、啓発ティッシュを配布。
・各市町村において「『知ってほしいな!』わたしたちのこと」のリーフレ
ットを各小学校4年生に配布
③「まほろばあいサポート運動」推進
④全国手をつなぐ育成会連合会の機関誌「手をつなぐ」の購読推進
(購読総数 7404冊)
⑤「奈良県手をつなぐ親たち」広報紙の発行・配布
⑥「本人の会全員集合」広報紙の発行・配布
◎障害者権利擁護事業
①成年後見制度の利用促進
②意思決定支援の推進
◎奈良県受託事業
①奈良県障害者110番事業委託事業
②奈良県知的障害者本人活動支援事業
③奈良県知的障害者相談員強化事業
◎関係機関との連携
①社会福祉法人奈良県手をつなぐ育成会
②奈良県障害者スポーツ協会
③奈良県知的障害者施設協会
④奈良県障害者福祉連合協議会
⑤奈良県特別支援教育関係機関
⑥奈良県社会参加推進センター
⑦奈良障害フォーラム(NDF)
⑧奈良県発達障害者支援センター「でぃあー」
⑨奈良県自立支援協議会